落語 みちの駅

第十回 連載コラムのご案内
 毎日新聞社・濱田元子記者からの依頼で10月~12月の月曜日夕刊にコラムを書くことになった。「ブックマーク」というコーナーで、話題は落語でなくても可ということだが、私の日常茶飯のことなど一文の値打ちもないのだから、落語とその周辺について記すことになるだろう。本稿とあまりツクことがないようにしなければいけない。

 掲載初日は10月5日ということだ。翌週12日は休日で夕刊がないから、まずはのんびりスタートという次第。11月にもこんなケースがあるので、幸いにして追われることはなさそうだ。年末まで10回か11回という予定になっている。

 ほぼ同じ文字数で東京新聞(中日新聞・北陸中日新聞)の連載コラムも目下継続中。こちらは2年目で来年1月の第2週まで(第1週は新年休刊日)、104回で終了する。掲載は東京新聞が毎週土曜日、中日新聞が金曜日でともに朝刊。週末の休刊は年に1回あるかないかなのでなかなか骨がおれたが、もう一息の段階になった。

 これは「落語人生劇場」と題していて、落語に描かれた人物の人生模様と何人かの落語家(ほとんど故人)の人生遍歴とをアトランダムに記してきた。戦後70年の今年8月には5回にわたって五代目古今亭志ん生、六代目三遊亭圓生の大陸残留話を書いた。

 落語については以前からずいぶんいろいろ書いてきたが、さて新聞となると単行本や演芸メディアとは違うアングルから書かなくてはいけない。

 専門誌(紙)と一般紙(誌)の読者は全く別物だからだ。落語は嫌いだ、ジンマシンになっちゃうという人はごく少なく、世人は落語におおむね好意的だが、命がけで落語を追い駆け回すマニアはおそらく総人口の0.1%もいない。それがまともな世の中だ。あまりウンチクを傾けずに落語のおもしろさを伝えるのはザルで水を汲むに等しい難事業で、四十年たっても一歩か二歩しか前へ出なかったようで気がひけるのだけれど。

著者紹介


京須偕充(きょうす ともみつ)

1942年東京・神田生まれ。
慶應義塾大学卒業。
ソニーミュージック(旧CBSソニー)のプロデューサーとして、六代目三遊亭圓生の「圓生百席」、三代目古今亭志ん朝、柳家小三治のライブシリーズなどの名録音で広く知られる。
少年時代からの寄席通い、戦後落語の黄金期の同時代体験、レコーディングでの経験などをもとに落語に関する多くの著作がある。
おもな著書に『古典落語CDの名盤』(光文社新書)、『落語名人会 夢の勢揃い』(文春新書)、『圓生の録音室』(ちくま文庫)、『落語の聴き熟し』(弘文出版)、『落語家 昭和の名人くらべ』(文藝春秋)、編書に『志ん朝の落語』(ちくま文庫)など。TBSテレビ「落語研究会」の解説のほか、「朝日名人会」などの落語会プロデュースも手掛けている。